瞬目不全とはただ閉じないだけでなく下眼瞼側の正しい動きができていないことについてはYouTubeで説明しています。
そこで「眼輪筋はどこからどこまであるのか先生ご存じ?」と同業者との飲み会の時、仲のいい日ごろからよく話をするベテラン眼科医に意地悪な質問をしてみた。
「この辺でしょう」と瞼の縁のあたりを指さす。
眼輪筋には大きく2つ「眼瞼部 Pars palpebralis」と「眼窩部 Pars orbitalis」に分けられるこれは眼科医の常識です。
私「それじゃあ、正確に眼瞼部はどこですか?眼窩部はどこのことですか?」と畳みかけると眼窩部の指摘が間違っているのである。
この時一緒にいた3~4人のドクターもみな同じです。
全員が間違っているのです。開業して10年以上のベテランのドクターです。
おそらく若い先生たちに聞いても同じでしょうあまり話をしたこともない大学医局の若い先生たちに聞いても嫌な顔をされるにきまっているので、このような意地悪な質問はしないことにしています。
眼窩orbita=オルビタという言葉は解剖学用語では「眼球の入っている骨のくぼんだ部分」という風に理解されています。
しかし本来の意味の「オルビタ」はあるものの周りをぐるぐる回る周回軌道のようなものをさしているのです。
NASAが月面に着陸して帰還した時の有名な「ルナオルビタ」まさにこれは月の周りをぐるぐる回りながら待ち受けていたのです。
すなわち眼輪筋の眼窩部は解剖学上の眼窩の上を覆うのではなく、眼瞼部のさらに周りを取り巻いている部分の筋肉であり頬骨の上に乗っているのです。
解剖図がまさにそれをさしています。
この解剖図はRauber-Kopschの解剖図でネットで「funatoka@gmail.com」で公開されている解剖学の図説でどなたでも利用できます。詳しく見たい方はアクセスして筋系から顔の筋肉を探してください。
「いまさら聞けない」実はわかっているようで誤解していることが実は多いのです。
普通、眼輪筋の広がりはというとこの図で左目の眼窩部筋肉の下の筋肉(小頬骨筋、大頬骨筋)を出すために眼窩部を取り除いた眼瞼部のことだと思っている人が多いのです。
眼輪筋の広がりの範囲はかなり広く大きいのですが薄くて弱い筋肉です。
日ごろからこの筋肉は「負荷のかからないわずかな動き」しかしていないのです、そのために動きそのものが少しでも悪くなるとたちまち萎縮するのです。
普段のまばたきはこの「眼瞼部眼輪筋」の動きであり「眼窩部眼輪筋」は意図的に強く目を閉じる時にすなわち目の周りに皺を寄せるように「ぎゅーっと閉じる」時に作動する。と教科書に書いてある。